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『カモン カモン』の作品情報
監督・脚本 | 監督:マイク・ミルズ 脚本:マイク・ミルズ |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2021年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 1時間48分 |
補足情報 | 原題:C’mon C’mon |
『カモン カモン』のあらすじ
ニューヨークのラジオ局で働いているラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、国中を旅しながら様々な子供たちに世界や将来のことを聞いて回っていた。
ある日、妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から、精神状態が不安定な元夫のそばにいる必要があるため、その間、9歳の甥のジェシー(ウッディー・ノーマン)の面倒を見て欲しいと頼まれる。
そして、妹が住むロサンゼルスでの甥っ子との共同生活が始まるが、好奇心旺盛なジェシーの予測できない行動や、答えづらい質問をストレートにぶつけてくる性格に戸惑うジョニー。
その一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、2人の距離は徐々に縮まっていく。
妹の問題が解決しないまま、仕事のためニューヨークに戻らなければいけなくなったジョニーは、ジェシーを連れて行くことに決めるが・・・。
『カモン カモン』のキャスト
- ホアキン・フェニックス(ジョニー)
- ウッディー・ノーマン(ジェシー・ジョニーの甥)
- ギャビー・ホフマン(ヴィヴ・ジョニーの妹)
- スクート・マクネイリー
- ジャブーキー・ヤング=ホワイト
『カモン カモン』の感想・評価
独身中年男性が9歳の甥と接していくうちに様々なことを学んでいく
ラジオジャーナリストの独身中年男性が、妹から頼まれて9歳の甥と接していくうちに、子育ての難しさや自分自身の感情に気付かされていく話。
全編が美しいモノクロ映像で撮影されていて、それにより視覚からの情報が極力排除されているので、この映画の重要な要素である言葉や対話、コミュニケーションや感情や声などが際立っていた。
さらに、モノクロ映像で世界をフラットにすることで物語に統一感が生まれたり、大人と子供も“同じ一人の人間なんだ”という感じも伝わってきた。
子供たちへのインタビューを通して、未来への希望を感じられたり、子供に一方的に質問をして会話を引き出すのと対話を通して接するのとでは全然違うという、ジェシーとのやり取りとの対比もあって良かった。
独身中年男性のジョニーは、ラジオジャーナリストとしてたくさんの子供に世界のことや将来のことについて聞いていて、子供のことを深く知っているように見える。
しかし、いざ甥のジェシーと深く接してみると、理解不能な話を延々と繰り返してきたり、急にいなくなったと思えば隠れて脅かしてきたり、自分のことをオウム返しのようにバカにしてきたり、それに対しイライラしたり不安になったり、いかに自分が子供のことをわかっていなかったのかと同時に、子育ての難しさを思い知らされていく。
なんだか、子供たちの言葉や感情の一部を見たり聞いたり知っただけで、子供のすべてを知った気分になっているジョニーのような、独身だったり子供とちゃんと向き合っていない大人たちに対し、現実を突きつけてくる気がした。
独身だから悪いとか子供と向き合っていないから悪いという意味ではなく、「子供についてあなたが知ってるのはその子のほんの一部なんだよ」と、子供について理解することや子育ての難しさを教えてくれている感じがした。
それに加えて、ジョニーが妹のヴィヴの家庭に口を出して妹と不仲になったことも考えると、相手と向き合ったり理解するためには、対話や言葉をし続けることが大切だと言うことを教えてくれているようだった。
あと、子供の行動に意味がなさそうでも実際に意味があるんだとわかるシーンがあった。
ジェシーは伯父のジョニーや母親のヴィヴに、彼ら大人たちには“死んだ子供”がいて、その子たちが何をしたか質問をしてきて、それを自分が再現するという一見奇妙なことをしてくる。
ジェシーは、仕事で遠く離れている精神病の父親と会えない日々が続いていたり、その父親の心配や自分自身の仕事で忙しい母親に構ってもらえていない、もしくは構ってもらえているけど寂しさを募らせているので、自分の存在を現実と切り離すことで自分の心を守ろうとしたんだと思う。
これ以外にも、ジェシーは伯父のジョニーに対して試し行為のようなことをいくつかしているので、この解釈はおそらく合ってるんじゃないかな。
「ただの子供がよくやる不思議な遊び」だと簡単に切り捨てないで、なぜ子供がそんなことをしているのか、考えたり問いかけてみることが大事なんだとよくわかるシーンだった。
しっとりと穏やかな空気感の中に、人との対話や言葉を尽くす大切さが詰まった良い映画だと思います。