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『アイ・キャン・スピーク』の作品情報
監督・脚本 | 監督:キム・ヒョンソク |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2017年 |
製作国 | 韓国 |
上映時間 | 1時間59分 |
補足情報 | 原題:아이 캔 스피크 英題:I Can Speak |
『アイ・キャン・スピーク』のあらすじ
20年間で8000件もの苦情を区役所に入れ、“要注意人物”として町で有名になっている「妖怪ばあさん」こと、ナ・オクブン(ナ・ムニ)。
役所の人間も恐れるそのおばさんのクレームを、新人公務員のパク・ミンジェ(イ・ジェフン)はルールに従って淡々と処理していた。
そんなある日、ミンジェが英会話講師と流暢な英語で会話しているのを見ていた妖怪ばあさんが、「英語を教えてくれないか」とミンジェに頼み込んでくる。
頼まれるたびに断っていたミンジェだったが、妖怪ばあさんが英語を教えてくれないならと大量の陳情書を置いて帰ろうとし、それを阻止したい同僚からの頼みでしぶしぶ英語を教えることになるが・・・。
『アイ・キャン・スピーク』のキャスト
- ナ・ムニ(妖怪ばあさん:ナ・オクブン)
- イ・ジェフン(公務員の男:パク・ミンジェ)
『アイ・キャン・スピーク』の感想・評価
妖怪ばあさんが英語を習う理由とは…
20年間で8000件もの苦情を区役所に届けている「妖怪ばあさん」が、ある日急に英語を覚えようとしだして、実はそれには深い理由があって・・・という話。
完全にネタバレしないと何も語れないのでこの映画の重大な部分を言ってしまうと、クレームおばさんと苦情に屈せず淡々と事務的に処理する新人公務員とのハートフルなコメディ映画かと思ったら、実はそのおばさんは元慰安婦(戦争の際に日本人将兵の性の相手をしていた女性たちのこと)だったというシリアスな展開。
韓国が得意のコメディ×シリアス×ヒューマンドラマを組み合わせた映画で、日本人には耳が痛くなるような内容で、韓国人からしたらスタンディングオベーションしたくなるような内容だったように思える。
日本人からするとこの映画の感想をどう表現していいかわからないけど、全体的には主役のおばあさんと公務員の男の演技は良かったし、やり取りも面白くてコメディ映画としては面白かった。
ただ映画全体を通してみると、おあさんのクレームキャラを始めとして終盤の慰安婦問題をドラマチックに描くためだけのギミックが多かったように感じて、「その内容はこの映画に必要だったの?」とか「ここの展開無理矢理じゃない?」みたいに思うところが多々あった。
これからいろいろ不満を言うけど、もしかしたら「慰安婦問題を出されて怒り心頭の日本人が重箱の隅を突くように荒探しをしている」と感じる人がいるかもしれないけど、自分はあくまで映画としての評価したつもりですし、反韓感情も特にないです。
まずは、おばさんのクレームキャラが中途半端で、20年間で8000件は常人ではありえない数字なんだけど、1日1件と考えたらクレームとしてはあまり多くない。
1日に何十回も同じ内容のクレームを入れるとかならまだしも、そういう感じではないし、クレーム内容も意外とまともなように思える。
他の人が「クレーム妖怪おばさん=元慰安婦である必要がない」というコメントに対し、「そのクレームがつらい経験くから来るものだってわからない?」みたいなコメントがあったけど、それにしては怒りの描写が中途半端だったように思える。
上記でもちょっと書いたけどクレームの内容がそれほど理不尽なものではなかったため、家族がいない孤独感や過去に慰安所でされたことへの悲しみや怒りの発露としてクレームを入れていたことに特に繋がっていない。
これは映画の構成のせいなんだろうけど、コメディ映画として見せた上に、おばさんが怒りで我を失ったり涙を流すみたいな描写も一切ないため、普通のクレームおばさんに見えてしまう。
もちろんすべてを描写しろとは言わないけど、おばさんが何千件もクレームをする理由の一端のようなものはどこかで見せても良かったと思う。
しかも、「慰安婦だとバレないように目立たないように生きてきた」みたいな発言があったけど、目立ちすぎでしょ。
あと、英語の勉強を始めた理由がいまいち説得力がない。
幼い頃に行き別れた、英語が話せて韓国語が離せない弟と話すためと思わせておいて、実は慰安婦の聴聞会で証言しようとしていた友達が認知症気味で記憶があやふやになってきたため、代わりに証言できるように数年前から独学で勉強を始めたって話なんだけど、それにしても英語が出来なさすぎるので本気度があまり感じられない。
世界中で伝わる英語という言語を使って、慰安婦問題を世界に知ってもらおうとしているのであれば、公務員の男と出会った段階でもう少し英語を話せても良かったはず。
結局、新人公務員との接点を作ったり、実は英語はこんな理由で勉強してました!という驚きの展開に繋げるための、浅い伏線にしか思えなかったのは残念だった。
それと、ラストで日本人将兵から受けた傷が体にあったことが判明したけど、それなら薄着をするのを嫌がったり、ノリでも人に体を触られるのが嫌だという描写があっても良かったと思う。
他にも公務員の男に親がいない設定も置いてけぼりで、おばさんを母親のように感じて口にアーンしてもらおうとする子供っぽいシーンはあったけどそれだけでは物足りず、ここをもっとちゃんと深掘りしておけば、親がいない若者がおばさんを母親のように感じ、親や他のきょうだいと疎遠になってしまった孤独な高齢女性が若者を息子のように慕うみたいな友情展開に繋げられたのにって感じ。
そもそも、都市再開発の設定はあってもなくても良かったと思うし、その設定を使うのであればそのシーンはもう少し短くても良かったと思う。
色々な内容を薄く広げて、それらの内容をほぼ無視して唐突にドラマチックな展開に繋げ、ラストでお涙頂戴するやり方は個人的には好みではなかった。
それと、細かい内容はともかく慰安婦問題自体は事実で、映画だから盛り上がりが必要なのはわかるけど、裁判でのやり取りが無理矢理日本人を下げるような感じがして、日本人としてはなんとも言えない気持ちになった。
韓国の実話を基にした映画を何本も見て、どこまでが事実なのかを調べたことがあるけれど、基本的に事実をベースに10倍くらい誇張している感じがあるので、事実っぽく描写されるのは納得いかなかった。
慰安婦問題を取り扱った社会派映画っぽい雰囲気を出すのであれば、日本と意見が真逆の韓国側からの目線でいいので、もう少しここを丁寧に扱って欲しかった。
もしくは、前半の内容を考えると、中途半端なシリアスな展開にするくらいなら後半は別な展開にした方が面白かったと思う。