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『あのこと』の作品情報
監督・脚本 | 監督:オードレイ・ディヴァン 脚本:マルシア・ロマーノ/オードレイ・ディヴァン |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2021年 |
製作国 | フランス |
上映時間 | 1時間40分 |
補足情報 | 原題:L’événement 英題:Happening |
『あのこと』のあらすじ
1960年代のフランス、文学専攻の大学生アンヌ(アナマリア・バルトロメイ)は、教師からも一目置かれるほど成績優秀で、将来は教師になることを夢見て日々勉学に励んでいた。
だがしかし、アンヌは望まぬ妊娠をしてしまう。
医者にどうにかして欲しいと頼み込むが、当時のフランスでは中絶が違法行為なためすぐに拒否されてしまう。
家族や友人にも相談することもできず、一人であらゆる解決策を試していくが・・・。
『あのこと』のキャスト
- アナマリア・バルトロメイ(アンヌ)
- サンドリーヌ・ボネール
- ケイシー・モッテ・クライン
- ルアナ・バイラミ
- ルイーズ・オリー・ディケロ
- ルイーズ・シュヴィヨット
『あのこと』の感想・評価

中絶が禁止のフランスで望まぬ妊娠をした大学生
中絶が禁止されていた1960年代のフランスを舞台に、妊娠してしまった大学生のアンヌが様々な手段を用いて中絶しようとする話。
原作がアニー・エルノーの自伝的小説で、実話を基に作られた映画。
現代でも学生で妊娠したら絶対に周りにバレないようにしたり、産婦人科に出入りするのも人に見られないようにしたり、親しい人にも言わないと想像できます。
この時代のフランスは中絶が禁止されているので、学生での妊娠=人生の終わりみたいな空気感だったからもちろん周りにバレてはいけない。
産婦人科への出入りが見られないことももそうだけど、中絶したら担当した医師も妊婦も刑務所行きだから病院に行ったところで妊娠したかどうかがわかるだけで中絶はできない。
何かしらの手助けをした友人も幇助みたいな扱いになる感じだから友人に助けを求めることもできないし、友人もその助けに応じることもできない。
アンヌを演じたアナマリア・バルトロメイの好演もあって、妊娠したアンヌのただただ時間が過ぎるだけの焦燥感、どうすることもできない状況に対する精神的・肉体的苦痛や悲壮感がすごく伝わってくるシリアスで息がつまるような映画でした。
火であぶって消毒した長い棒を自ら膣内に挿入して中絶しようとするシーンは正直見てられないくらいキツいシーンです。
現代であれば、金銭的負担をなくすために男性が中絶費用を出したり、医療の進化によって肉体的負担はある程度減らせるけれど、当時のフランスはそもそも中絶手術がないから中絶関連の金銭的な負担が発生せず、中絶するには自力でやるか闇医者みたいなのに頼むしかないので肉体的・精神的負担が大きすぎて、一人の男としてはもう言葉にならないくらい、なんかもうとにかく見ていてつらくなるシーンが多かった。
避妊なしの無責任な性行為による望まぬ妊娠をする女性が増えないよう、学校の保険の授業で男全員に見てもらいたい。
「妊娠しちゃうから避妊なしの性行為はダメだよ~」なんて言葉だけの生ぬるい授業よりも、圧倒的説得力のある映画でした。
フランスの歴史をちょっと調べてみると、フランスはキリスト教(特にカトリック)が多くカトリックの教説が中絶を禁止していたようですが、中絶どころか避妊も禁止されていて、避妊の知識を教えなかったり、避妊器具手に入れることも困難だったようです。
そこに女性差別が加わったことで、女性に選択権がない=避妊ができないと繋がっているみたいです。
現代のフランスでは、世界で初めて中絶権が憲法に明記、人工妊娠中絶の費用は100%健康保険でカバーされ、逆に中絶を妨害する行為をした場合は「中絶妨害罪」として懲役や罰金が科せられる犯罪になっています。