【感想・ネタバレ】映画『aftersun/アフターサン』大人になる娘の成長と大人になれない父親の葛藤【★4.0】

【感想・ネタバレ】映画『aftersun/アフターサン』大人になる娘の成長と大人になれない父親の葛藤【★4.0】

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『aftersun/アフターサン』の作品情報

監督・脚本監督:シャーロット・ウェルズ
脚本:シャーロット・ウェルズ
ジャンルドラマ
製作年2022年
製作国イギリス、アメリカ
上映時間1時間41分
補足情報原題:Aftersun

『aftersun/アフターサン』のあらすじ

夏の休暇中、11歳の少女・ソフィ(フランキー・コリオ)は、母親と離婚して遠くで暮らしている31歳の父親・カラム(ポール・メスカル)と一緒にトルコのリゾート地にやってきた。
ビデオカメラでお互いを撮り合い、父親との大切な時間を過ごしながら、そこでの様々な経験によって少女は少しずつ大人へと成長していく。
20年後、父親と同じ年齢になったソフィ(セリア・ロウルソン・ホール)は、思い出の映像を振り返りながら、当時は知らなかった父親の一面を見つ出そうとするーーー。

『aftersun/アフターサン』の登場人物・キャスト

  • ポール・メスカル(カラム)
  • フランキー・コリオ(ソフィ)
  • セリア・ロウルソン・ホール(大人になったソフィ)
  • ケイリー・コールマン
  • サリー・メッシャム

『aftersun/アフターサン』の感想・ネタバレ・評価

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (4)

大人になる娘の成長と大人になれない父親の葛藤


休暇を利用してリゾート地にやってきた父と娘の思い出を、大人になった娘がホームビデオを見ながらその過去を振り返る話で、監督のシャーロット・ウェルズの自伝的要素を含む作品です。

基本的には父と娘がお互いの姿をホームビデオで撮影しながら2人だけのバケーションを数日間過ごすだけの物語で、全体的に説明不足で行間を観客の想像力に委ねすぎていると思っていたけど、この映画のラストシーンを観たことでその感想が180度ひっくり返った。
それまでの物語の余白がちゃんと意味があるもので、あえて余白を多く残すことによって、観客の想像力が入り込む隙を与えてくれていたんだと自分は解釈した。

11歳のソフィは、夏の数日間のバケーションでたくさんの経験をすることで大人へと成長していく。
自分より年上の若者たちと交流したり、その若者たちがキスするシーンを目の前で見たり、ゲイのカップルがキスするところを目撃したり、同い年の男の子とキスをしたり、歌がヘタなのに1人で人前でカラオケを歌ったり、一人で部屋に戻ってカギがないことをフロントに相談して開けてもらったり、この数日間で色々な経験をして大人になっていく。

一方で、父親のカラムは31歳になるが、金銭的にも不安で精神的にも不安で離婚して娘と別々に暮らしていて、自分が頭の中で描いていたような大人になれていないことに鬱屈とした思いを抱えている。
父親として娘を愛していて、何かをしてあげたいと思っているけど、それが出来ない自分にふがいなさを感じている。

父親のカラムが金銭的な問題を抱えているのを示すシーンがいくつかあった。
1つ目は、ツインベッドの部屋を予約したのにダブルベッド1つの部屋を用意されたことに対してフロントに電話し、その対応(小さなベッドを用意すること)に不満を持つことで、これは一見普通の行動に見えるけど娘と2人ならダブルベッドでも問題ないし、せっかくの娘との2人旅ならわざわざ水を差すようなことをしなくてもいいのに、わざわざ電話してします(これはちょっと強引な解釈だけど)。
2つ目は、パラグライダーをしたいという娘に「年齢制限がある」と断ったところ、これは本当に年齢制限があったのかもしれないけど、あの時点では父親は把握してないはず。
3つ目は、飲食代を出したくない(出せない?)からレストランで食い逃げ(?)するところ。
4つ目は、病院代をケチろうと自分でギプスを外そうとするところ。
5つ目は、娘が高い潜水マスクを失くして謝ってきたことに対し、すぐに気にするなと言えないところ。
6つ目は、捨てられていたまだ火が付いているタバコの吸い殻を吸うところ。
全部がそうかはわからないけど、これらはカラムが金銭的な問題を抱えることを示すシーンだったと思う。
そして、金銭的な不安を娘に見せまいと、高いカーペットを買ったり、歌がヘタな娘にボイストレーニング代を出すと提案するところに、その不安が如実に表れていた。

あと、カラムはうつ病か何か精神的な問題を抱えていたようで、それがわかるのが太極拳をやっていたり瞑想の本を読んでいるところ。
別に精神的に問題がなくても太極拳はやるだろうし瞑想の本も読むんだろうけど、その他にもふとした時の表情の暗さだったり、娘がいないところで泣いたりしているので、精神的な不安定さをどうにかしようと頑張っていたことが伺えるシーンだった。
あと、娘がビデオを回しながら「11歳のとき将来は何をしてると思ってた?」と聞いてきたことに対し、少し怒りをあらわにし撮影を止めるところもそうかな。

そんな父親の悩みを当時の幼いソフィはわかっていなくて、いや、わかってあげられなかった。
そんな自分を悔いるように、大人になったソフィはホームビデオを通して父親の内面を理解しようとする。
それまでにこの映画が積み上げてきた物語と、そんなソフィの姿を見るとなんか心にグッとくるものがある。

この映画をわかったように語ってきたけど実際そんなにわかっていないし、1回じゃ理解できない映画だと思う。
いつかもう少し大人になってから、今度はカラムの表情や感情に注目しながら観たい。

原題でもあり邦題でもある『aftersun(アフターサン)』は、日焼け後の肌に塗るローションのことで、日焼けした肌にするアフターケア的な意味があります。
なので、ソフィにとっての父親の思い出を映したホームビデオ、監督にとってのこの映画がその役割を果たしているからこそのこのタイトルなのかなと思います。

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