【映画感想・レビュー】映画『消された女』韓国で実際に起こった法律を悪用した精神病院への拉致監禁事件を扱った社会派サスペンス

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映画『消された女』の作品情報

監督・脚本監督:イ・チョルハ
出演者カン・イェウォン
イ・サンユン
チェ・ジノ
ジャンルサスペンス
製作年2016年
製作国韓国
上映時間1時間31分
補足情報原題:날, 보러와요
英題:Insane

映画『消された女』のあらすじ・内容

ヤラセが原因で「追跡24時」という番組を降板した元プロデューサーのナ・ナムス(イ・サンユン)宛てに1冊の手帳が届く。
その手帳には、火災事故でなくなった精神病院で起こった、信じがたい出来事の数々が記録されていた。
その真相を確かめるため、手帳の持ち主であり火災事故の唯一の生存者であるカン・スア(カン・イェウォン)に会いに行く。
そして、カン・スアへの取材を重ねるうちに、精神病院で起こったある衝撃の真実が明らかになっていくーーー。

映画『消された女』の感想・レビュー・評価

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (3.5)

韓国で実際に起こった法律を悪用した精神病院への拉致監禁事件を扱った社会派サスペンス


韓国で実際に起こった、法律を悪用して健康な人間を拉致監禁し、精神病院に強制入院させるという社会問題を基にした実話ベースの社会派サスペンス映画。

そこそこ面白かったんだけど、韓国映画が実話を基にした映画でやりがちな、実話(ノンフィクション)3割、映画的面白さを追求したフィクション7割で、実話もとの内容の面白さを半減してしまう感じはがっかりでした。

まずは、実在した拉致監禁事件の詳細は各々調べてもらうとして、この拉致監禁事件が起こるに至った流れとしては、精神保健法第24条を悪用すれば、保護者2人の同意と精神科専門医1人の診断があれば、患者本人の同意なしで保護入院として精神病院に強制入院させることができてしまうというものです。
もともと精神病を患っている人だけではなく、健康な人(親族)でも入院させることが出来てしまうというおぞましい事件です。
そして、親族などを入院させた後に患者本人の財産を奪うみたいな手口だそうです。恐ろしいですね。

実話の事件の内容はこの辺にして、話を映画の内容に戻しましょう。
監督もインタビューで語ってるけど、完全ノンフィクションでやってしまうと、個人情報とか関係者からの反対の声が上がってしまうので、ノンフィクションは全体の30%くらいで、あとは映画的な面白さを追求したみたいえで、冒頭の拉致シーンは完全に映画的アイディアだそうです。

その他の映画的アイディアだろうなというシーンは、精神病院の患者を解剖して臓器売買しているとか、警察署長と精神病院側が繋がっていたとか、逃げ出した患者を警察署長の指示で下っ端の警察が捕まえるとか、もうめちゃくちゃです。

実話の話のインパクトが強すぎるので、そこをベースに丁寧にサスペンス映画を作れば良かったのに、臓器売買とか裏で警察が繋がっていたとかのインパクトの方が強すぎて、実話の拉致監禁事件がかすんでしまっていたように感じます。
財産を奪うために無理矢理、親族などを入院させるまではわかるけど、入院した病院先で臓器売買が起こってましたはやりすぎです。

さらには、色々あってノンフィクション要素を薄めて、サスペンス要素を強くしたのに、そのサスペンス要素がお粗末過ぎな上に、無理がある展開をスピーディーに進めてしまうため、終わった後に、「いや、どういうこと?」という感想しか出ませんでした。

サスペンス要素のダメな部分を言うと、そもそもの話の始まりは、「追跡24時」という真実を追求するドキュメンタリー番組のプロデューサーをやっていたナ・ナムス宛てに1冊の手帳が届き、その手帳を書いていたのが、精神病院の火災事故の唯一の生き残りであるカン・スアの物で、その手帳には精神病院でのおぞましい出来事が記されていて、その手帳やカン・スアの証言から真実を追い求めるという内容です。

それで、ラストにはその手帳に書かれた内容もカン・スアの証言も、カン・スアに都合が良いようにすり替えられた内容だったということがわかり、視聴者騙されたー!調べていたプロデューサーのナ・ナムスも騙されたー!カン・スアはやってやったと言ったドヤり顔で終わります。

手帳やカン・スアの証言から当時の精神病院での出来事が徐々に明かされて行くんですけど、カン・スアが目撃していない関与していない出来事までそれがあたかも真実かのように視聴者に映像付きで提示されていくんですけど、まあ、それはカン・スアが都合よく作り上げたの嘘なのですが、どこまでが嘘かどこまでが本当かは視聴者が知るすべはありません。

そしてその情報が嘘か真実かを判断する材料なく、伏線も特になく、最後の最後でどんでん返しのように、あれも嘘でした!これも嘘でした!みたいに明かされていくんですけど、その内容がほぼほぼ“夢オチでした”みたいな強引さ、しかも伏線も何もないので、正直、観終わったとは「ポカーン」という感じでした。

そもそも、手帳だか証言だかでわかった、精神病院から抜け出した血だらけの人間がふらふらと町を歩いていて拉致されたという話は、事実なら絶対ニュースになっているはずだしネットで調べればわかるような話を主人公のナ・ナムスは特に調べもしないというアホっぷり。

さらに、カン・スアが関与していた警察署長を撃ち殺しました!社会で話題!裁判をします!無罪になりました!という流れがあるんですけど、それも警察が調べたら自殺か他殺かなんて簡単にわかるよねという話なんですよ。
映像では警察署長は後ろから頭を撃ち抜かれているみたいなので、他殺以外ありえないでしょ・・・というね。

要は、カン・スアは養父である警察署長に恨みがあって殺したけど、その事実を隠すため、養父である警察署長の不正を暴くため、そして裁判で無罪を勝ち取るため、偽の精神病院での出来事を手帳に書いて、それをナ・ナムスに送り、それらを基に追跡24時という番組でこの事実を取り上げてもらおうみたいな流れにしたかったようです。

書いてて自分でも何が言いたいのかわからなくなってきましたが、結局どれが真実でどれが嘘かもわからなく、それを判断する材料も映画内では提示されていないため、サスペンスとしてはダメだなという感想でした。

あと、警察署長殺しの容疑者として拘留(?)されてるみたいなのに、あの日記いつ書いたんだ?
手帳書いて、警察署長を殺して、捕まる前になんか時間差で届くように送ったのか?
そういうシーンもないため、真相は闇の中です・・・。