【映画感想・レビュー】映画『グランド・ジョー』閉塞感のある田舎での暴力と貧困の連鎖

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映画『グランド・ジョー』の作品情報

監督・脚本監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演者ニコラス・ケイジ
タイ・シェリダン
ゲイリー・ポールター
ロニー・ジーン・ブレヴィンズ
エイドリアン・ミシュラー
ジャンルドラマ、クライム
製作年2013年
製作国アメリカ
上映時間1時間57分
補足情報原題:Joe

映画『グランド・ジョー』のあらすじ・内容

アメリカ南部の田舎町で暮らすジョー(ニコラス・ケイジ)は、過去に刑務所に服役していた前科持ちだが、いまは森林伐採業者として懸命に働いていた。
ある日、仕事を探していると言ってきた少年・ゲリー(タイ・シェリダン)を雇うが、数日後、彼が酒に溺れる父親からの暴力に耐えながら母親と妹を養っていたことを知る。
最初はいちいち構ってらないという態度のジョーだったが、車の運転を教えたりと、少しずつ少年に生きていく術を身に付けさせていく。
そんなある日、ジョーの元に血だらけの少年が現れたことで事態が一変するーーー。

映画『グランド・ジョー』の感想・レビュー

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (3.5)

閉塞感のある田舎での暴力と貧困の連鎖


ニコラス・ケイジ演じる前科持ちの中年男が、親父の暴力に耐えながら母親と妹を養う少年を救う話。

ストーリーは『グラントリノ』っぽい感じで、派手な演出は特になく、淡々と田舎での生活風景を描いていく感じだが、辛気臭い閉塞感のある田舎での暴力と貧困の連鎖がすごく感じられる作品。
ニコラス・ケイジ演じるジョーもいいけど、ゲリーの暴力親父の清々しいクズっぷりも見どころの一つ。

前科持ちのジョーが、周りの空気に流されないよう、過去の自分にいまの自分が飲み込まれないように必死に自制してもがきながら生きる様子は地味だが、現状から抜け出せない人の姿をはっきりと映し出しているように感じました。

貧困で暴力親父がいる家庭に育った少年に対しては、「もし生まれる親が違ったら」「もし生まれた場所がここじゃなかったら」と思わざるを得ないです。
「無理矢理そこから離れればいいじゃん」とか「いまできることをすればいいじゃん」みたいな綺麗ごとを言うのは簡単だけど、そんな言葉ではどうしようもない環境や境遇の人も世の中にはいるわけです。

貧困の種類も、“お金がない”という意味の貧困だけではなく、“情報不足”という意味の貧困もあります。
もし、ジョーや少年の周りに貧困家庭から抜け出した人がいれば、貧困から脱するためのお金の稼ぎ方を知っていれば現状をどうにかすることもできたでしょう。

ただ、彼ら(ジョーや少年以外の登場人物たち)には人生の規範になるような人物も周りにいないし、日本で受けられるような教育も受けていないだろうし、情報を得る手段もあまりないという環境に置かれているため、現状を打破することが出来ず、鬱屈とした空気の田舎町でずっと暮らしていくんだろうなと思わされるシーンがいくつもあります。

そして、そこで生まれたストレスは酒やたばこ、暴力でしか解消することができず、そうやって特に何も生まれない退屈な日常を過ごすことしかできない貧困層の生活や、負の連鎖というものをすごく感じられる作品だなと思いました。

特に感動もしないし、派手な盛り上がりもないけど、「世の中には自分の力だけではどうしようもない環境で生活している人もたくさんいる」ということを改めて知れただけでも、価値があった映画だなと思います。

ラストのシーンで一筋の希望が見えるのも良かったです。