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『涙するまで、生きる』の作品情報
監督・脚本 | 監督:ダヴィド・オールホッフェン 脚本:ダヴィド・オロファン |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2014年 |
製作国 | フランス |
上映時間 | 1時間41分 |
補足情報 | 原題:Loin Des Hommes |
『涙するまで、生きる』のあらすじ
1954年、フランスからの独立運動が激化しているアルジェリア。
元軍人でいまは教師をしているフランス人のダリュ(ヴィゴ・モーテンセン)は、近隣の村に住むアルジェリア人の子供たちにフランスの地理を教えたり、一緒に遊んだり、彼らの家族に麦を与えたりしながら日々を過ごしていた。
そんなある日、ダリュの元にフランス憲兵が一人の男を連れて来て、殺人の容疑がかかるそのアラブ人(レダ・カテブ)を裁判所がある町まで送り届けるよう命令されるが・・・。
『涙するまで、生きる』のキャスト
- ヴィゴ・モーテンセン(ダリュ)
- レダ・カテブ(モハメド)
『涙するまで、生きる』の感想・評価
殺人を犯したアラブ人とフランス人教師の奇妙な砂漠ロードムービー
元軍人でいまは教師をやっているフランス人の男が、フランス憲兵の命令により殺人の容疑者をかけられたアラブ人の男を裁判所がある町まで連れて行こうとするが、その途中で様々なトラブルに巻き込まれる話。
元軍人で現教師の男と罪人のアラブ人による砂漠を舞台にした西部劇チックなロードムービーという感じの映画で、男2人による短くも感動的な友情を描いている。
1954年のフランスからの独立運動が激化しているアルジェリアが舞台なのと、アラブ人が関係している話が出てくるので、前提の知識がないと難しい映画だったと思う(実際に自分は難しかった)。
モハメドが言っていた“血の代償”とは、イスラム世界で現在も使われている法律でイスラム法の刑罰の一種で、被害者(もしくは被害者家族)が、被害と同様の苦痛を加害者に与えるか賠償金をもらうかを選ぶ権利があって、この負の連鎖を止めるためにモハメドはフランス政府に逮捕されて処刑してもらおうとします。
モハメドに起こったこととやろうとしていることを説明すると、
→モハメドは従兄弟に麦を取られそうになるが、そうすると家族が飢え死にするので反撃で従兄弟を殺してしまう
→その“血の代償”として被害者遺族に命を差し出す(殺される)か賠償金として金銭を渡さないといけない
→貧しいから金銭は渡せないが自分が被害者遺族に殺されてしまうと、今度はその“血の代償”としてモハメドの家族がモハメドを殺した人に復讐する権利が与えられる
→モハメドは復讐する権利を自分の家族に与えたくないが、自分が逃げ続けると報復としてモハメドの家族に傷つけられる(もしくは殺される)可能性がある
→負の連鎖を止めるために復讐する権利を自分の家族に与えないようにしながら、血の代償として自分の家族が傷つけられることを防ぐために、フランス政府に処刑してもらおうとする
という流れになります。
殺したモハメドも悪いんだけど、麦を盗もうとした従兄弟が悪い、だけどイスラム法では同様の罰(今回はモハメドを殺すことの許可)を与えられるという日本人は馴染みのない法律となっているのです。
雑に言うと、強盗を殺したら自分も被害者遺族から殺されるということですね。
ダリュはちょっと独特な立ち位置です。
過去にフランスがアルジェリアを植民地にしたときにフランス人を入植(移民のようなもの)させました。
後に、約900万人のアラブ系を約100万人のフランス人入植者の子孫(コロン)が支配して、その子孫がダリュです。
ダリュはフランスが支配しているアルジェリアで生まれたので国籍からするとフランス人、両親はスペイン人なので血はスペイン人、生まれてからずっとアルジェリアで育ってきたので、まとめるとアルジェリア生まれのスペイン系フランス人となります。
そのせいでフランス人からはアラブ人扱いで、アラブ人からはフランス人扱いと板挟みな人生を送ってきました。
それと、フランスがイタリアなどと戦争するときにアラブ人も徴兵したので、元軍人のダリュからするとアラブ人は一緒に戦った戦友のような存在なので、フランス人だけどアラブ人には比較的好意的です。
フランス人だけど色々ありながらアルジェリアで育って戦争を経験してきたダリュからすると、死刑にさせるためにアラブ人をフランスの裁判所まで連れて行くのは納得できないので、ときどきモハメドに逃げるように伝えるのです。
全体的に荒涼とした砂漠のシーンが多めで物語は静かに進み、フランスとアルジェリアの紛争やアラブの掟によって命の重みを感じるような渋い作品でした。