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『タレンタイム〜優しい歌』の作品情報
監督・脚本 | 監督:ヤスミン・アフマド 脚本:ヤスミン・アフマド |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2009年 |
製作国 | マレーシア |
上映時間 | 1時間55分 |
補足情報 | 原題:TALENTIME |
『タレンタイム〜優しい歌』のあらすじ
多民族国家・マレーシアのある高校で、音楽コンクール“タレンタイム”が開催されることに。
参加者でピアノと歌が上手なマレー系の女子学生ムルー(パメラ・チョン)は、自分の送迎役で耳の聞こえないインド系のマヘシュと恋に落ちる。
二胡を演奏する優等生で中華系のカーホウは、転校してきた成績優秀でギターも歌も上手なマレー系のハフィズにトップの座を奪われ、わだかまりを感じていた。
マレー系、インド系、中国系、様々な民族や宗教が交じり合うことで生じる葛藤に悩みながら、彼らはいよいよコンクール当日を迎えるーーー。
『タレンタイム〜優しい歌』のキャスト
- マヘシュ・ジュガル・キショー(マヘシュ)
- パメラ・チョン(ムルー)
- モハマド・シャフィー・ナスウィップ(ハフィズ)
- ハワード・ホン・カーホウ(カーホウ)
『タレンタイム〜優しい歌』の感想・評価
多民族国家・マレーシアで巻き起こる青春群像劇
高校で行われる音楽コンクール“タレンタイム”までの日常を描きながら、マレー系、中華系、インド系など様々な民族や宗教が存在するマレーシア特有の悩みや葛藤を映し出した群像劇スタイルの映画。
おなら、ゲップ、下ネタなどフランス映画のような下品なジョークがストレートで笑っちゃうし、セリフや言葉の言い回しが面白い場面が多かった。
ピアノを弾きながら歌うシーンと、ギターを弾きながら歌うシーンは歌声がきれいだし歌詞も良くて感動したけど、男の子の方はなんか歌ってる感じしないなと思ってたら、歌っているのはAizat Amdanというマレーシア人のシンガーソングライターらしい。
良かったシーンもちょこちょこあったけど、全体的には気になることの方が多かった。
映画を観ている間は「多民族ゆえの悩みがあるんだろうな」ってうすうす感じたけど、調べてみると主要なキャストのムルーはマレーシアとイギリスの血が入ってるイスラム教で、マヘシュはインド人のヒンドゥー教で、ハフィズはマレー人のイスラム教で、カーホウは中華系と、一つの学校に様々な民族や宗教が存在している。
それで、そういったマレーシアという国特有の衝突みたいなものを描きたかったんだろうけど、どうも「宗教が違うからダメ」みたいな描写はあんまりなかったのは物足りなく感じた。
マヘシュとムルーの恋愛に関して最後にそういった描写があったけど、そこまで禁止感が強くないから、恋愛に反対する母親がただの毒親っぽく見えちゃったし、中華系の男の子とマレー人でイスラム教の男の子と対立は、今まで成績トップだった中華系の子が、転校してきたマレー人の子にトップの座を奪われて妬んでただけだから民族もなにも関係ないし。
あと、マヘシュの叔父が多民族とケンカして死んじゃうけど展開が急すぎる。
それまで民族の違いゆえのいざこざが行われていて、ある日それが一気に爆発したとかならわかるんだけど、あまりにも急すぎる。
ここのシーンは、工夫次第で民族対立に根深さを描けたんじゃないかな。
それと、ハフィズの母親が脳腫瘍で闘病して亡くなるという展開も含めて思ったことだけど、「死」をただの感動の材料に使っているだけに見えてしまった。
他に気になったのは、主人公のマヘシュが聴覚言語障害者で聞くことも話すこともできないのはわかるんだけど、友達はもちろん、家族とも手話を使ったりスマホで文字を打ったりして会話をしないのは違和感がある。
マヘシュが聴覚言語障害者だということを観客に意図的に伏せて、ムルーがそれを知るタイミングで感動させたかったのかな?「ただの無口な子じゃなくてそういう障害だったのか!」みたいな。
なんで手話などを会話で使わなかったのかはわからないけど、マヘシュが手話を解禁して以降、マヘシュもその友達も手話で会話する頻度が劇的に増えたのも謎。
まるで、マヘシュのことを不愛想で失礼なやつと思っていたムルーが、実は彼が聴覚言語障害者と気付いて、「なんて私はバカだったんだろう」と思う感動的(?)なシーンの解禁を待っていたみたい。
全体的に恋愛要素も多いけど、どれもあっさりとしていたし、なんか色々な要素を入れた結果、話がまとまらずに終わりましたって印象。
これなら、マヘシュとムルーに話の焦点を当てて学生&マレーシア版のロミオとジュリエットみたいな物語にするか、ゴリゴリの民族対立の話にした方が面白かった気がする。
ラストの中華系の子とマレー系の子の共演とハグはお涙頂戴の陳腐な演出だったかな、そこにいたるまで物語で積み重ねてきたものもなかったし。
めちゃくちゃ文句言ったけど面白い部分は何個もあったし、それゆえにもっと面白くなりそうだなと思った映画でした。