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『空(カラ)の味』の作品情報
監督・脚本 | 監督:塚田万理奈 脚本:塚田万理奈 |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2016年 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 2時間6分 |
補足情報 | – |
『空(カラ)の味』のあらすじ
優しい家族に囲まれ、友人にも恵まれ、何不自由なく暮らしている普通の女子高生・聡子(堀春菜)。
しかし、そんな聡子に徐々に異変が起き始める。
大量のお菓子や菓子パンを買い込み、誰にもバレないように食べては吐くを繰り返すようになり、いつしか、食べることを我慢できない、抑えられないようになってしまう。
誰にも言えず一人苦しみながらも、食べることへの衝動が抑えられない日々が続いていたが、そんなある日、聡子が吐いていたことが家族にバレてしまい・・・。
『空(カラ)の味』のキャスト
- 堀春菜
- 松井薫平
- 南久松真奈
- 井上智之
- イワゴウサトシ
- 柴田瑠歌
- 松本恭子
- 笠松七海
- 林田沙希絵
『空(カラ)の味』の感想・評価
摂食障害の女子高生の葛藤を監督の実体験を基に映像化
摂食障害に悩む女子高校生の話で、実際に摂食障害に苦しんだ塚田監督自身の経験を基に作られた作品。
最近、たまたま堀春菜さんが出ている映画を観ていて良い役者さんだなと思っていたけど、この映画でさらに魅力に磨きが掛かった気がする。
たくさんの菓子パンやお菓子などを息をひそめ誰にも見つからないように食べ、その痕跡を残さないように必死になる姿は、正直視聴者としては恐怖だった。理性では抑えられない食への本能剥き出しの姿がとても怖かった。
ただ、自分がそう感じてしまったということは、それ以上に当事者は悩み苦しみ、葛藤していることへの裏返しで、今までとは違う自分、原因もわからず自分が自分じゃなくなるような感覚は摂食障害を経験した人にしか絶対わからないものだから、自分ができることは「摂食障害という病気で苦しんでいる人がいる」ということを知ることだと思った。
摂食障害経験者が、実体験を基にその苦しみや現実を語る様子をテレビのニュースやネット番組で見たことはあったけど、この映画はより摂食障害を持つ人への現実や心情に寄り添った映画に思えた。
あと、聡子が吐いていることに気が付いた家族が家族会議みたいなことをするシーンは、リアルでグロテスクだった。
父親が「大丈夫か?」と聞いたり「俺は心配しているんだ」と言ってるけど、そのくせ「変な薬とかやってないよな?」と聞いちゃうのは、本当は心配しているんじゃなくて娘が変なことをしていないかを確かめて自分が安心したいだけなのが透けて見えるのが気持ち悪い。
「人の魅力は見た目じゃないって大人になったらわかるぞ」って言うけど、そんな未来の話じゃなくて、いま子供が悩んでいるんだから、いまの子供の気持ちに耳を傾けなよって強く思った。
「なんで助けてって言わなかったんだ、家族だろ」って言葉も、家族だから言えないこともあるし、助けを求められなかった事実を責めている感じがして嫌だった。
母親は母親で、「絶対大丈夫だから」って言葉に娘は病気なんかじゃないって思いたい感じがプンプンするし、一番泣きたくて苦しんでるのは子供のはずなのに先に泣いて子供の逃げ場を潰すしさ。
摂食障害が悪ってわけではないけど、病気で大丈夫じゃないんだから、大丈夫でいることを強制するなよ。
そして、お兄ちゃん。なんで泣いた。妹が苦しんでいることになんで気が付いてあげられなかったんだって後悔の涙じゃないだろ。それ。「なんで妹はこんな風になっちゃったんだ」の涙だろ。その涙は妹を傷つける。早く涙を自分で舐めて拭き取れ。
あのシーンは、子供を純粋に心配しているわけではない、各々が安心したいという気持ちが前面に出ているし、悩み相談じゃなくてほぼ尋問みたいになってるし、めっちゃグロテスクだった。
家に泊めてくれた友達は演技も含めめっちゃ良かった。
電話からの家に泊めるまでのシーンでご飯を食べ過ぎちゃうってことを伝えたのか伝えていないのかは描写されていないからわからないけど、バターサブレを勧めるけど食べ過ぎと思ったら「今日はここまで」って止めるところに優しさを感じる。
なんか、「食べちゃダメじゃないけど食べ過ぎはダメだよ」って言っているような感じを、食べる事をはっきりと否定しないように、でも食べ過ぎ(止められない)のはやんわりと良くないよってことを、さらっと間接的に伝えるところが良かった。
あとは、自分に対して病気とかなんかおかしいとか関係なく、いつも通りの友達で居てくれるところも良かった。
摂食障害の人に対しては、痩せすぎだからちゃんとご飯食べなって押し付けたり、食べ過ぎはダメ!また吐いちゃうよ!みたいなことを言う人もいるだろうし、すごく優しい対応だった。
聡子がこの子の家に泊まるようになってから、友達の明るさとさりげない優しさで常に涙腺が潤んでいた。
気になったのは、いままで繋がっていた物語が、急にぶつ切りにされたような、雑に投げ出したように急展開することがたびたびあって、そこで話がわかりづらくなっていたのは残念。
登校拒否も前触れなく始まったし、友達の家に長期間?泊まりに行くことになった過程もわからなかったし、家族が和解したっぽい雰囲気も雑だった気がする。
特に家族に関しては距離を置いたらスッキリするってこともあるだろうけど、お母さんと遠出の散歩?行く過程も描かれてなかったので、映画全体としてあえて説明しないことで語られたこともあるだろうけど、やっぱり全体的に説明不足な感じは否めなかった。
最後の30分くらいのマキさんの主張が強くて、もう少し短くして他の部分を濃くした方が良かった気がした。
映画を観終わった後に調べてみたら、監督自身がマキさんみたいな人物と出会って救われた経験があるみたいなので、あまり非難はしづらいけど…。
マキさん自身の登場は良かった、聡子に家族・友達以外の新しい居場所が出来たことは良いことだろうし、マキさんにとっても聡子の存在は大きかったろうし、2人のやりとりは良かった。
ただ、ちょっと長かったかな。
家族は聡子の気持ちを全否定して受け入れない、友達は肯定も否定もしない感じほぼ変わらず今まで通りの関係でいる、マキさんは聡子のありのままを認めて全肯定してくれる感じで展開にメリハリがあるので、聡子の心情が徐々に変化していく過程がわかりやすくて良かった。
終わり方は、この映画ならああいう最後に自分の感情を全部乗っけるとか、何かの比喩表現?自分が時系列を理解できてなかっただけかも知れないけど、普通の終わりでも十分面白かったたんじゃないかなと思う。
マキさんと連絡が取れなくなった→病院のカットで希望を持たせる感じで終わらした方がスッキリした気がする。
ただ、監督自身がマキさんに言いたかった言葉を聡子に言わせたんだとしたら、それがどうとか視聴者が言うのは野暮なので、そうだったら勝手なこと言ってすみませんでした。