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『ティル』の作品情報
監督・脚本 | 監督:シノニエ・チュクウ 脚本:シノニエ・チュクウ |
ジャンル | ドラマ、伝記 |
製作年 | 2022年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 2時間10分 |
補足情報 | 原題:Till |
『ティル』のあらすじ
1955年8月、アメリカ・イリノイ州シカゴ。
黒人女性メイミー・ティル(ダニエル・デッドワイラー)は、1人息子で14歳のエメット(ジャリン・ホール)と二人で穏やかな日々を過ごしていた。
そんなある日、エメットはミシシッピ州マネーに住む叔父と従兄弟に会うため、生まれて初めて故郷を離れることに。
出発前は不安で仕方がなかったメイミーだったが、エメットが向こうで元気にやっているという手紙を受け取り少しだけ安心していた。
そんな中、悲劇は起こってしまうーーー。
仲間と一緒に飲食雑貨店を訪れていたエメットが、レジをしていた白人女性のキャロリンに向かって口笛を吹いたことが原因で白人たちの怒りを買い、拉致後に壮絶なリンチを受けて殺されてしまう。
顔の原型がわからないほど暴行された我が子の悲惨な姿を見て、悲しみに打ちひしがれるメイミーだったが、息子に何が起きたかを全米に知らしめるため、ありのままの息子の姿を公開することを決意する。
『ティル』のキャスト
- ダニエル・デッドワイラー(メイミー・ティル)
- ジャリン・ホール(エメット)
- ウーピー・ゴールドバーグ(アルマ)
- ショーン・パトリック・トーマス(ジーン)
- ジョン・ダグラス・トンプソン(モーゼ)
- ヘイリー・ベネット(キャロリン)
- フランキー・フェイソン
- ケヴィン・キャロル
- ロジャー・グーンヴァー・スミス
- トシン・コール
- ブレンダン・パトリック・コナー
『ティル』の感想・評価
アメリカを変えた残忍なリンチ事件
白人たちに集団リンチされて殺された息子のため、アメリカに蔓延る人種差別をなくすために戦った母親の実話を基にした伝記ドラマ。
アフリカ系アメリカ人の14歳の黒人少年が、白人女性に口笛を吹いたことが原因でリンチされて殺された「エメット・ティル殺害事件」を映画化した作品です。
あらすじを見ていて少年が殺されるのはわかっていた分、最初の陽気な音楽や、いつもと変わらない穏やかで幸せな日常が続くかのようなメイミーとエメット親子のやりとりを見ているだけでもうつらい気持ちになる。
エメットと白人女性のキャロラインとでどのような会話がされていたかは諸説あるらしいが、少なくとも顔の原型がわからないほど殴打して殺される理由にはならない。
当時のエメットの遺体の写真(スーツを着た上半身)がネットにあって見たけど、実物で見たら耐えられないと思う、それだけひどい姿だった。
序盤で“黒人は黙ってても殺される”って発言があったけど、遺体の写真を見ても誇張抜きでそういう地域だったんだろうなと感じる。
さらには、裁判では陪審員12人全員が白人だし、裁判所どころか州全体で黒人差別を歓迎しているかのような雰囲気に言葉を失う。
それにしても、2022年にようやく「エメット・ティル反リンチ法」という、増悪犯罪(差別感情や憎悪を動機とした攻撃行為)を取り締まることができるようになったとは言え、それまでに事件発生から67年も費やしたというのが驚き。
だって、その法律が生まれるきっかけになった事件の被害者の名前が使われているということは、それだけアメリカ中で大きな影響を与えていたという証明なわけで、それなのに何十年も掛かるものなのかと思う。
殺された少年エメットの母親を演じたメイミーを演じたダニエル・デッドワイラーの熱演が光っていて、我が子を突如命を奪われる喪失感は計り知れないのに、悲しみから立ち上がり差別をなくすために戦った姿に胸が熱くなった。
アメリカ人だけではなく、人種差別に対して関心を持つためにも全員が見るべき映画だなと思った。