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『みんな元気』の作品情報
監督・脚本 | 監督:カーク・ジョーンズ 脚本:カーク・ジョーンズ |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2009年 |
製作国 | アメリカ、イタリア |
上映時間 | 1時間40分 |
補足情報 | 原題:EVERYBODY’S FINE |
『みんな元気』のあらすじ
妻を亡くしたフランク(ロバート・デ・デニーロ)の家では、毎年、感謝祭シーズンには実家に子供たちが集まっていた。
しかし、今年は4人の子供たち全員が仕事などの都合により帰れなくなったと連絡を受けたフランクは、アメリカ各地に住む子供たちにサプライズで会いに行くことを決める。
幸せの生活を送っていることを期待して子供たちを訪ねるフランクだったが、彼らは理想とは程遠い現実を送っていた・・・。
『みんな元気』のキャスト
- ロバート・デ・ニーロ
- ドリュー・バリモア
- ケイト・ベッキンセイル
- サム・ロックウェル
- ルシアン・メイゼル
- ダミアン・ヤング
- ジェームズ・フレインメリッサ・レオ
- キャサリン・メーニッヒ
- ブレンダン・セクストン三世
- ジェームズ・マータフ
- オースティン・リシー
- シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック
『みんな元気』の感想・評価
子供の話を聞かない親と本音を言えない子供たち
妻を亡くしたフランクは、毎年感謝祭シーズンになると実家に帰ってきていた4人の子供たちが今年は仕事などが忙しくて帰ってこれないことを知り、子供たちが自分に会いに来るのではなく自分から子供たちに会いに行こうと思い立ち、子供たちにはそのことを内緒にし、サプライズで会いに行く話。
序盤では、妻を亡くしたフランクは子供たちが帰ってくることをいままで以上に楽しみにし、丁寧に掃除機をかけたり、庭の芝刈りをし、外のタイルの汚れを高圧洗浄機で綺麗にしたり、テーブルやイスを用意したり、プールに空気を入れて水を入れたり、高いワインを買ったり、高いお肉を買ったり、最新のバーべーキューマシーンを買ったりと、ハッキリと顔には出さないが、楽しみにしていることが伝わってきてほっこりする。
しかし、子供たちから次々に今年は家に帰れないという連絡が入り、寂しそうなフランクにこっちまで心が苦しくなる。
そして、遠いところにいる子供たちに自分からサプライズで会いに行こう!となったとき、ほっこり系のコメディとかドラマ映画なのかなと思っていたら、いい意味で期待を裏切られる映画だった。
フランクは一見、温厚で優しくて人当りが良さそうな印象だが、フランクの“おかしな点”が次々と明らかになっていく。
最初から怪しい点は実はあった。やたらと家族が集まることを人に話したりするのは、ただただ嬉しくてついつい周りに話してしまったように見えるが、これは彼なりの“幸せアピール”だったのだろう。
最低価格と言われたセール品のバーべーキューマシーンを値切るところにも、彼の自己中さのような部分が垣間見える。
家族にサプライズで会いに行くのもおちゃめな感じがするが、子供立ちが「仕事が忙しくて会えない」「子供が熱を出して大変」と言われたのにもかかわらず会いに行くのも、子供たちの都合や事情ではなく、自分が会いたいという欲望を優先して動いている。
医者から、フランクが肺線維症で飛行機もバスも列車も危険だと忠告したにも関わらず、その話を無視して子供に会いに行く。
旅の途中も、チケットを買う受付にわざわざ息子に会いに行くと言ったり、列車で目の前に座った女性に、自分が電線の周りをコーティングしたことをアピールするために変なクイズをしたり、そのクイズに参加してきた通路越しの老婆のとんちんかんな回答には冷たくあしらったり、目の前の女性が聞いてもいないのに子供の写真を見せて名前と職業を教えたり、「4人のために必死で働いた、おかげで4人とも成功した」なんて言っちゃうところにも、フランクが自分の思い通りにならない人間(勝手に出したクイズの答えを探そうとしない老婆)には冷たかったり、周りに自分の幸せや子供の成功をアピールするところに、フランクの嫌な部分がじんわりと滲みだしてくる。
その後も、ファミレスで自分が周りにしていたように自分の子供の話をしてきたお年寄りの話は相槌もなしで興味なさそうに聞くところもちょっと性格が悪い部分が出ちゃってる。
子供に会いに行った時も、彼の目には現在の立派に大人になった姿の子供たちは見えていなくて、昔の幼い頃の子供のままの印象で止まってるし、口笛で呼ぶ感じも、子供たちのことを一人の大人として見ていないことを示唆している。
あとはもうこんな感じの展開がてんこ盛りで、孫の成績に口を出したり、人の流れを止めてでも写真を撮ろうとしたり、スーツケースをガンガンぶつけながら階段の上り下りをしたり、オーケストラがリハーサル中と言われたのにスーツケースをガラガラと音を立てながら移動したりするところに、人の話を聞かない、周りのことを気にしないところが存分に出ている。
指揮者をしていると思っていた息子がパーカッションをしているとわかるとそれをバカにしたり、今からでも指揮者になるのは遅くないと催促したりするところに、子供を自分が見栄を張るための道具として見ていることが伺える。
自分はヘビースモーカーだったのに、子供がタバコを吸おうとすると、まるで未成年の子供がタバコを吸うのを止めるかのようにタバコをやめろと言ったり、自分のせいで子供がイライラしているのに、そのイライラはタバコのせいだと思っていたり、子供をいつまでも子ども扱いしたり、自分の振る舞いの傲慢さにいつまで経っても気づかないでいる。
結婚していない子供に恋人の有無を聞くのも、幸せや一人前の大人になる=結婚と考えているのだろう。
薬物中毒者に勝手に同情してお金を渡し、その人が礼を言わなかったら「金をやったんだから礼くらい言うべきだろ」と言うのも、「せっかくこんなにしてやったんだから」精神が伝わってきて気持ちが悪い。
最後の方では、子供に「お父さんは〇〇だった」と自分の問題点を指摘されても、「そんなことはない」の一点張りの強情さを発揮して子供に会いに行くサプライズ旅行は終了します。
そんなこんなで、子供の話を一切聞かず、自分の価値観や幸せを押し付け、子供が変わらず子供のままでいることを望み、いま現在幸せで人に自慢できるような子供たちでいることを期待した結果、子供が父親に本音を話せなくなり、それどころか幸せな自分を作り上げて見栄を張るようになってしまった親子の不仲が、サプライズ旅行を通じて徐々に明らかになっていき、一人の子供の死によって親として間違っていたことをしたんだと気づき、なんとか親子不仲が雪解けする話でした。
とりあえずハッピーエンドだから、ほとんどの人は「良い話だった!」という感想みたいだったけど、自分もその感想はありつつも、子供のために良かれと思ってやったこと言ってたことが実は子供を苦しめることになっていた毒親そのものの振る舞いの気持ち悪さも感じる、なんだか胸がグワァーっとなる作品でした。
ちゃんと親も子離れして、「子供が元気であればそれでいい」とか、「子供なりの幸せの形を見つけてくれたらそれでいい」と思うことの大切さを教えてくれました。