【感想・評価】映画『揺れるとき』貧困家庭ならではの現実をまざまざと突き付けられる【★4.0】

【感想・評価】映画『揺れるとき』貧困家庭ならではの現実をまざまざと突き付けられる【★4.0】

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『揺れるとき』の作品情報

監督・脚本監督:サミュエル・セイス
脚本:サミュエル・セイス
ジャンルドラマ
製作年2021年
製作国フランス
上映時間1時間33分
補足情報原題:Petite nature
英題:Softie

『揺れるとき』のあらすじ

フランス・ロレーヌ地方の貧困家庭で育った10歳の少年・ジョニー(アリオシャ・ライナール)は、妹の世話をしているせいか同級生の友達はおらず、むしろ大人の話に興味を持つような年齢の割に成熟した子供だ。
ある日、ジョニーの新しい担任となった若い男の先生・アダムスキーに興味を持ち始める。
アダムスキー自身も、母親に殴られたことで自分に助けを求めてきたジョニーを気に掛けるようになるが・・・。

『揺れるとき』のキャスト

  • アリオシャ・ライナール
  • メリッサ・オレクサ
  • アントワーヌ・レナルツ
  • イジア・イジュラン

『揺れるとき』の感想・評価

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (4)

貧困家庭ならではの現実をまざまざと突き付けられる


貧困家庭で育った10歳の少年・ジョニーの、貧困家庭ならではの現実をまざまざと突き付けられている感じがする映画だった。

ジョニーの母親はシングルマザーで、男に依存していて、収入も決して多くないし学もない。
せっかくジョニーが良い担任と巡り合えて本を読むようになったり、勉強するようになったりしても、母親自身が勉強ができないから勉強する意味がわかっていないし、勉強している子供がおかしくなったと言わんばかりに非難する。
奨学金などの話を聞かされて将来の選択肢を与えられても、「あなたがいないとこの家は回らない」と、子供の将来よりも自分の生活の心配で、ジョニーの将来なんて知ったこっちゃない。
例え周りの大人が子供を良い方向に導こうとしても、結局は親の判断次第で全部ダメになってしまう感じが生々しい。

しかも、家庭の雰囲気が絶望的に悪いわけじゃないから余計に質が悪い。
これがわかりやすく暴力家庭とかであれば、学校や警察などの公的機関が家庭に介入できるけど、そうじゃないから踏み込むこともできない。
だから、他の大人に強く助けを求めることもできず、ジョニーの人生における新たな選択肢が徐々に狭まっていく感じがなんとも言えない気持ちになる。

高校生?くらいの兄はいるけど、兄がジョニーや妹の面倒を見る様子もなく、不良っぽい連中とつるんでいて、「弟と妹の面倒を見てやれよ」と思うけど、きっと兄も自分が小さい頃に弟のジョニーの面倒を見ていたんだろうなと考えると、兄が下の弟妹の面倒を見ないことも非難はできない。これについては描写がないから完全に想像だけど・・・。

ジョニーはまだ10歳で遊び盛りのはずなのに、妹の世話に追われているせいか同級生と遊ぶ様子も仲良くする様子もないのでおそらく友達がいないのも価値観の形成に影響あるよな・・・。

年の離れた男の先生を好きになるのも、LGBTの話だとか、ゲイの幼い男の子と言うよりは、父親がいないことによる父性への渇望が暴走してしまった感じにも見える。
あとは、母親と男の恋愛を見過ぎてしまったせいなのかな。

幼い頃に子供が子供らしくいられないことが、子供自身の精神にどう影響していくのかがわかるような映画だった。

ラストはあまり現実的じゃないけど、現実的に終わってしまったら何の救いもないから、ジョニーの未来に希望が持てるラストで良かったなと思う。

あと地味に衝撃的だったのは、小学校での避難訓練が地震や火事ではなくテロや襲撃に備えているシーン。
海外ではそういう訓練をしている国もあるというのは知識としては知っていたが、改めて映像として見ると、訓練とはいえ恐ろしい光景だった。

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