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『草原の実験』の作品情報
監督・脚本 | 監督:アレクサンドル・コット 脚本:アレクサンドル・コット |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2014年 |
製作国 | ロシア |
上映時間 | 1時間36分 |
補足情報 | 原題:ISPYTANIE |
『草原の実験』のあらすじ
広大な草原にある小さな家で暮らす父親と少女。
少女は、毎朝どこかへと働きに出かける父親を見送っては、その帰りを待つ穏やかな日々を過ごしていた。
しかし、そんな日常に暗い影が落ちようとしていたーーー。
『草原の実験』のキャスト
- エレーナ・アン
- ダニーラ・ラッソマーヒン
- カリーム・パカチャコーフ
『草原の実験』の感想・評価
父親と少女の穏やかな日常…
広大な草原での父親と娘の穏やかで静かな日常や、娘と2人の若者の三角関係の恋などを描いたドラマ映画。
この映画は演者のセリフが一切ないのが特徴的で、それにより圧倒的な映像美や乗り物や動物、風などの自然の音がすごく印象的な作品だった。
セリフがないので当然物語の説明もなく、何が起こっているのかを映像から読み取るしかなく、知識がないと少々理解が難しい映画なので、具体的な考察は他の人のレビューを参考にしてもらいたい。
とりあえず映像から伝わるのは、モンゴル人っぽい見た目の父親と東洋人と白人の両方の見た目を備えた独特な雰囲気の娘が、家の周りには自分たちの建物以外何もなく、ただ平原が広がっている土地で暮らしているということ。
そこにロシア人らしきパイロット2人が飛行機と共にやってきて、その飛行機に父親が乗り込んで少し空の旅に出る。
その後、彼らと親密そうに握手を交わしていたり、自前のフライトジャケットやパイロットゴーグルを持っているので、ロシア人らしき彼らと交流のある(あった)元空軍のパイロットだと推測できる。
さらに、フライトジャケットやパイロットゴーグルのデザインが、ジブリアニメ『紅の豚』の主人公や、映画『永遠の0』での零戦パイロットの服装に似ているので、第二次世界大戦が終わったあとの世界に見えるのでおそらく1945年以降の時代。
途中で馬に乗ったアジア人顔の遊牧民らしき青年とロシア人らしき白人の青年もやってきたことから、ロシアとの国境近くのアジア、カザフスタンかモンゴルあたりなのかな?
父親の仕事はまだ不明だが、仕事に行くときに娘も一緒に車に乗っているけど途中で降ろすことから、娘は入ることができないどこかで働いているらしい。
その後、自宅に銃を持った人たちがやってきて、ガイガーカウンター(放射線測定器)で色々な場所を調べ始める。
そして、父親の乗っている車から異常な反応があり、さらに調べると謎の物体がたくさん入った箱が見つかり、そこが異常な数値を示している。
さらに、父親から異常な数値が検出された上に、数日寝込んで医者を呼ぶことになった。
このことから、父親が核物質を扱う場所で働いていて、そこから核物質を盗み出していて、大量に被爆していたことがわかる。
そこから少女が謎の手紙を郵便配達員から受け取り、さらに父親が亡くなったことで車でどこかに行こうとするが、途中でフェンスに阻まれる。
それで、最終的には大爆発によりキノコ雲が上がるんだけど、キノコ雲は基本的には核爆発を意味している。
このことから、1945年以降にカザフスタンかモンゴルら辺でロシアが核実験をしていて、それに現地住民が巻き込まれたみたいな映画なのかなと思う。
ここまでは何も調べずに書いたけど、調べてみるとこの映画は、旧ソビエト連邦(現:ロシア)がカザフ共和国(現・カザフスタン)で行っていたセミパラチンスク核実験場での核実験をモデルにしていた。
この核実験は1949年-1991年まで約40年以上、合計456回の核実験が行われていたらしく、軍事機密のために周辺住民には何も知らされていなかったため、様々な健康被害を受けた人が合計150万人を超えると推定されている。
物語がある程度わかったところでもう少し感想を述べると、主役の少女の、東洋人っぽさもあるけど白人っぽさもあり、幼さもあるけど大人っぽさもある独特の雰囲気が無声映画を成り立たせていたように見えた。
調べてみると、少女は韓国人とロシア人のハーフらしいですね。
ロシアが過去に行ってきた核実験への問題提起の意味が込められている映画だと思いますが、セリフを一切排除することで映像や音に説得力を持たせることで、ただのドラマ映画では出せない魅力が込められている感じがしました。
また、あえて無声にすることで、ロシアの核実験によって死んでしまった(声を奪われた)人たちのことも表しているのかなと思いました。
1枚1枚の写真を見るように物語を楽しみながら、目や耳から伝わる情報を頼りに、いま何が起こっているのかを紐解いていく楽しさが静かに感じる良作でした。