【映画感想・レビュー】映画『ニトラム/NITRAM』オーストラリアで実際に起こった「ポートアーサー事件」を映画化

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映画『ニトラム/NITRAM』の作品情報

監督・脚本監督:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
出演者ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ジュディ・デイヴィス
エシー・デイヴィス
ショーン・キーナン
アンソニー・ラパリア
アナベル・マーシャル・ロス
ジャンルスリラー
製作年2021年
製作国オーストラリア
上映時間1時間52分
補足情報原題:Nitram

映画『ニトラム/NITRAM』のあらすじ・内容

1990年代半ばのオーストラリア・タスマニア島。
オーストラリアの郊外で父と母と3人で暮らす青年・ニトラム(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)。
子供の頃から変わり者だった彼は、本名である「マーティン(MARTIN)」を逆さから読んだ「ニトラム(NITRAM)」という蔑称で呼ばれバカにされてきた。
ある日、サーフィンに憧れたニトラムは、サーフボードを買うための資金集めとして芝刈りの訪問営業をしていると、ヘレン(エシー・デイヴィス)という女性と出会うーーー。

映画『ニトラム/NITRAM』の感想・レビュー・評価

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (4)

オーストラリアで実際に起こった「ポートアーサー事件」を映画化


1996年4月28日、オーストラリアのタスマニア島、世界遺産の観光地ポート・アーサー流刑場跡で実際に起こった無差別銃乱射事件を映画化したもの。

序盤から漂う雰囲気で、この物語は決して幸せな結末ではない、緩やかに破滅へと向かっていくだけという感じが伝わってくる。

ニトラムの行動や生活を見ていても、彼一人の力では性格や生き方を変える力が残されていない、幼い頃から彼と向き合ってきた母親もうっすらと諦めていて、父親は彼一人でも生きていけるように観光地向けの宿泊業を始めようとするけど、目星の付けた土地を先に変われて上手く行かない。
その後は、ヘレンという女性と出会い人生が好転しそうな雰囲気…があるわけでもない。

まるで、溺れて必死に生きようと何度も水面に顔を出そうとするけど、そのうち力尽きて溺れ死んでしまうのを待っているかのような展開に鬱屈とした気持ちになる。

主人公のニトラムは映画では明言されていないけど、実話では知能障害を持っていて具体的なIQの数値は不明だが知能テストの結果は平均以下(IQ100以下)。
だけど、事前に現場を下見していたり、複数の銃を用意していたことから計画的犯行とされ、精神鑑定でも責任能力ありと判断される程度の知能は持っていた。
事件を起こした動機は一切不明。

もちろん、知的障害だからこういう事件を起こしたというわけではないけど、知的障害ゆえの生きづらさや孤立、本人にしかわからないような不満や怒りが積もっていった結果に加えて、ヘレンがなくなったことで50万ドル以上の大金が手に入ったこと、オーストラリアでは誰でも簡単に銃が買えるような状況だったこと。
これらの歯車が噛み合ってしまった結果、起こってしまった事件なのだろうか。

この映画を観たからと言って自分が何かできるわけではないけど、この事件がきっかけでわずか12日後に銃規制が強まったのはわずかな救いだろうか…(ただ、映画のエンドロールで判明する事実を見ると何とも言えない)。

そう言えば、劇中でニトラム(NITRAM)が本名であるマーティン(MARTIN)と呼ばれたことは一度もなかったような気がする。
これは、マーティンという人物がこの世から無視されているかのような感じを表していたのかな。