【映画感想・レビュー】映画『岬の兄妹』足に障害を持つ兄と自閉症の妹の二人暮らしの話【きょうだい児】

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映画『岬の兄妹』の作品情報

監督片山慎三
出演者松浦祐也
和田光沙
北山雅康
岩谷健司
中村祐太郎
風祭ゆき
ナガセケイ
松澤匠
芹澤興人
杉本安生
ジャンルドラマ
製作年2018年
製作国日本
上映時間時間分
補足情報

映画『岬の兄妹』のあらすじ・内容

ある港町、足の障害が原因で仕事をクビになった良夫(松浦祐也)は生活に困っていた。
さらには、自閉症の妹の真理子(和田光沙)がまたもや失踪してしまう。
良夫が必死に探し回り、夜中になんとか真理子は見つかったのだが、彼女のポケットから身に覚えのない1万円札が出てきたことで、妹が町の男に体を売って金銭を受け取っていたことを知り、激しく怒りつける。
だが、仕事をクビになりお金に困窮していた良夫は、罪の意識を持ちつつも妹を売春させることを決意する。

映画『岬の兄妹』の感想・レビュー・評価

ただのペンギン🐧の映画感想・レビュー&評価
総合評価
 (4)

足に障害を持つ兄と自閉症の妹の二人暮らしの話


内容はずっしりと重く、救いようもなく、あまりの生々しさに、映画ではなく一種のドキュメンタリーを見ているような衝撃的な作品だった。
かなり陰鬱なテーマなので、見る予定の人は身構えながらご覧ください…

とりあえず、兄妹の演技、特に妹役の和田光沙さんの演技がとても素晴らしかった。
自分の知人にも自閉症、知的障害を持つ人がいるので、自閉症を持つ妹の演技がリアルで生々しく、それゆえに心臓が潰されるような苦しさを感じた。
あの妹が演技によって作られた存在と言うのも驚きだし、どうやって役作りしたのか気になって仕方がない。

映画を観ていて思ったのは、“生活保護を受ければいいじゃん”とか“誰か生活保護を勧めてあげてよ”ということ。

妹は自閉症(と知的障害もあるかもしれない)で一人で役所に行って手続きをするのは難しいだろうが、兄は足に障害がある以外は大きな問題はないように見えるので、第三者目線だと「早く生活保護を受ければいいのに」と思ってしまう。

だけど、本人たちが生活保護を申請しないのにはきっと理由が3つくらいあって、
1.そもそも生活保護という存在を知らない
2.生活保護を受けるという選択肢が思い浮かばない
3.生活保護を受けたくないと思っている
のどれかだと思うけど、おそらく2番の理由なのかな。

もし、自分が生活に困窮したとして、頼れる人間がいなかったとしても「そうだ、生活保護を受ければいいじゃん!」とはならなそうだし、第三者目線だと簡単に思いつくようなことも、いざ当事者になれば難しい問題なんだろうなと感じた。

あとは、二人は完全に孤立しているわけではなく、元の職場の人と仲が悪かった感じでもなかったし、兄の唯一の友人であろう警察の人もそばにいたから、誰かしら「生活保護を受けてみない?」と勧めてあげてもいいのに…

と思うけども、生活に困窮している友人を見て「生活保護を考えてみるのはどうかな?」なんて提案は思いつくだろうか、思いついても言えるだろうかと考えてしまった。

実際に自分や友人が生活保護を受けている。受けていた経験があれば、そういう選択肢は思いつくかもしれないけど、実際に経験してみないと難しい問題なのだろう。

兄妹に関わる人たちの中には、警察官の友人とか、婦人科の先生が出てくるにも関わらず、“生活保護”というワードすっら出てこないのは、人によってはリアルさに欠けると判断するかも知れないが、この兄妹のように社会福祉の網目から抜け落ちた人たちはたくさんいることの証明でもあると思う。