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『Mommy/マミー』の作品情報
監督・脚本 | 監督:グザヴィエ・ドラン 脚本:グザヴィエ・ドラン |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2014年 |
製作国 | カナダ |
上映時間 | 2時間18分 |
補足情報 | 原題:Mommy |
『Mommy/マミー』のあらすじ
2015年の架空のカナダでは、公共医療政策として“S-14法案”という法律が制定された。
その法律とは、発達障害児の親が経済的困難や身体的・精神的な危機に陥った場合に限り、法的手続きを無視して子供を施設に入院させることができるというものだった。
シングルマザーのダイアン・デュプレ(アンヌ・ドルヴァル)と、一人息子でADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つスティーヴ(アントワン=オリヴィエ・ピロン)の運命は、この法律が出来たことで大きく左右されることになる。
『Mommy/マミー』のキャスト
- アンヌ・ドルヴァル(ダイアン・デュプレ)
- スザンヌ・クレマン(カイラ)
- アントワン=オリヴィエ・ピロン(スティーヴ・デュプレ)
- パトリック・ユアール
- アレクサンドル・ゴイエット
- ヴィヴィアン・パスカル
- ナタリー・ハメイル・ロイ
- イザベル・ネリッセ
- テッド・パルビオス
- ピエール=イヴ・カルディナル
『Mommy/マミー』の感想・評価
法的手続きを無視して障害児を施設に入れることができる架空の法律と親子愛の話
発達障害児の親はある特定の条件を満たした時に限り、法的手続きを無視して子供を施設に入院させることができるという、架空のカナダで生まれた法律とある親子の話。
シングルマザーのダイアンの息子・スティーヴは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)という障害を持っていて、少年院のような施設に入れられた後、食道を放火したことで施設側から呼び出されるという強烈なシーンから始まる。
どのように息子が火をつけたのかはわからないが、彼が不良だから悪いことをしたわけではなく、障害による衝動性(思いつくと行動してしまう)が原因と思われる。
そして、大勢の入所者を見てきた人物にすら「救える子もいれば手に負えない子もいる、我々は努力した」と匙を投げられてしまったので、ダイアンが幼い頃からどれだけ息子に苦労させられたかが伺えるシーンでもあり、その息子と一人で向き合っていかなければいけないダイアンの苦悩が伝わってくるシーンでもあった。
その後、スティーヴは母親が喜ぶと思ってスーパーからネックレスや食料品を盗んだり、感情的になって母親に手を挙げたり、物を破壊したりと、たびたび問題行動を起こすたびに愛情深く接するダイアンの姿に胸が締め付けられる。
そういったダイアンの苦悩や葛藤を見てきたからこそ、後半に「もしスティーヴに障害がなかったら…」という“ifのストーリー”を見せられた後に現実世界に引き戻されるシーンは、思わず目を逸らしてしまうほどのエグさがあった。
映画を観終わった後は、真夏の暑さにじわじわと体力を奪われていくような疲労感がどっと押し寄せてきた。
偶然出会った向かいの家の女性・カイラとの交流を通して、3人が3人とも何かしら救われていく展開や、選曲がすごく魅力的だったのがこの映画の心の拠り所。
あと良かった点は、映画の大部分の画面が1:1のアスペクト比、つまり完全な正方形で表示されていて、最初は「なんとなく違った映像で他の映画と差別化したのかな?それにしても見づらいな」と思っていたら、親子の人生が上向いてきた瞬間にスティーブがカーテンを開けるようにスクリーンをこじ開ける演出がとても印象的だった。
残念だったのは、序盤に架空の法律についてちょろっとダイアンが触れただけで、ラストまでその設定はほとんどないものとして扱われていたので、特殊な設定があまり活かされていなかったのはちょっともったいなかった気がした。
スティーヴが問題行動を起こすたびに「法律を使うべきか…いや親子なんだから愛情深く接していけば大丈夫!」みたいな流れを何回かやるとか、中盤くらいでその法律を利用した後のダイアンとスティーヴの生活の変化や関係性の変化を描いた方が面白くなったんじゃないかな。
ぶっちゃけ、架空の法律はあってもなくてもそんなに展開は変わらなかったと思う。
全体的な評価としては、楽観的に希望を描かず静かに現実を突きつける感じに作りながらも、出会う人によって救われることもあるというほんのわずかな光を残してくれたのは良かった。