この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
目次(タップして移動)
『エール!』の作品情報
監督・脚本 | 監督:エリック・ラルティゴ 脚本:ヴィクトリア・ベドス、トーマス・ビデガン |
ジャンル | ドラマ |
製作年 | 2014年 |
製作国 | フランス |
上映時間 | 1時間45分 |
補足情報 | 原題:La famille Bélier |
『エール!』のあらすじ
フランスの田舎町で農家を営むベリエ家は、高校生の長女・ポーラ(ルアンヌ・エメラ)以外の、容姿端麗な母、情熱的な父、ゲーム好きでおませな弟の3人全員が聴覚障害者。
家族唯一の健常者であるポーラは、家族が仕事をする上では欠かせない存在で、学校と仕事の往復で大変ではあるものの、とても仲の良い家族だった。
ある日、コーラス部でのポーラの歌声を聴いた音楽教師・トマソン(エリック・エルモスニーノ)から、パリの音楽学校のオーディションを受けることを勧められる。
夢と希望に胸が膨らむポーラだったが、彼女の歌声を聴いたことがない家族からはその才能を信じてもらうことができず、大反対される。
さらには、一家の「通訳」でもある自分がいなくなってしまったら…と思い悩んだ末、ポーラは夢を諦める決意をするのだが・・・。
『エール!』のキャスト
- カリン・ヴィアール
- ルアンヌ・エメラ
- フランソワ・ダミアン
- エリック・エルモスニーノ
- ロクサーヌ・デュラン
『エール!』の感想・レビュー
聴覚障害者の家族3人を支える1人の少女
聴覚障害を持つ3人と家族唯一の健常者で外部との通訳担当の高校生の少女・ポーラの4人による、家族愛の物語。
『コーダ あいのうた』のリメイク元の作品です。
お下品なギャグが多めで、良くも悪くもフランス色が強いなと言う感じ。
特に最初~中盤まではそういったコメディ要素多めで、面白い雰囲気は出てるけどいまいち盛り上がるにかけるシーンが続きますが、終盤のポーラがデュエットを歌うシーンの“ある演出”とか、ラストのオーディションでの歌詞と歌声と手話を交えて家族に自分の気持ちを訴える演出は圧巻で、それだけでこの映画を観る価値があったと思えるほどです。
ここからは不満な点を書いていきます。
自分の聴覚障害者に対しての知識が少ないというのもありますが、ポーラへの依存がかなり強いところです。
両親が生まれつき聴覚障害を持っていたのか、聾唖(ろうあ・高度の難聴)なのかは調べてもはっきりはわかりませんでしたが、映画から読み取ると彼女がいなければ生活がならないレベルまで依存しているように感じます。
ここで「ポーラが生まれる前はどうやって暮らしてきたの?」という疑問が出てきますし、ポーラがいなくても仕事はしていたと思いますし、そうするとポーラに頼らなくてもある程度問題なく生活を送っていたはず。
ここら辺がはっきりと描かれていないので、設定が中途半端なように感じました。
あとは、家族愛をテーマに描いていてそれに感動したという人もいると思いますが、ポーラがどうみてもヤングケアラーにしか見えない点です。
いまのベリエ家は、高校生のポーラがいなければ仕事が回らないので、自分のことを犠牲にしながら家族を支えています。
「いや、ポーラ自身が良ければいいんじゃない?ポーラも家族のことは好きで大切だろうし」と思う人もいるかもしれません。
もし、ポーラが高校生らしい生活、例えば夢に向かって頑張ったり(今回の場合はパリの学校へ行くこと)が問題なくできていればそういう感想も理解できますが、今回は「自分がパリへ行ってしまったら家族はどうなるのか」という悩みに加え、母親からの罵詈雑言を浴びせられたことで夢を諦めてしまいます。
特にこの母親がきつくて、ポーラがパリの学校へ行きたいと夢を語った時には「農場や市場、パパの選挙の手伝いはどうするの?」と言ったり、その後も「あの子は、私の赤ちゃんよ」手伝いに来てくれたポーラの友人で手話初心者のマチルドに対しては「マチルドの手話は最低」で、神経性の湿疹が出たとポーラに愚痴ったり、「私はあなたを導く役目だったのに、どこで間違えたの?」「私はいい母親じゃなかった、家族がどれほど大事か教えてきたのにあなたには通じなかった」「子育てに失敗した」に対してポーラが素晴らしい母親だったと言うがそれに対し「だったらどうしてパリに行くの?」などなど、地獄のような罵詈雑言が続きます。
これに対して、ポーラは両親をフォローしながらも、柔らかい口調でパリの学校へ行くことを認めてもらおうとしますが無理だとわかったのか、「私は一生チーズを売る運命なのね」という発言をし、ここで「母親は一生自分を家族を笹支える道具として利用する気だ」と気づいたように思えます。
こういった流れだったり、劇中で1回だけ出てた“家族はひとつ”みたいな合言葉のようなセリフから、“家族愛”というよりは、“歪な家族愛”をポーラ一人に押し付けて家族の元から逃がさないようにしている感じに見えるため、あまりこの家族がやっていることに共感ができず、僕は感動することができませんでした。
少し話はそれますが、ポーラの好きな人が家に来た時にポーラが初めての生理を迎えるのですが、その際に母親が血の付いたズボンを持ってリビングに行き、その男の子がいるのもお構いなしに盛り上がる様子もきつかったです。
その後に父親が、何も言わずにポーラをビンタするるのも、弟が男の子に「姉貴とヤッたの?」と聞くのも「こいつら全員頭がおかしいんじゃないか?」と思いました。
めちゃくちゃ文句を言っていますがそれも含めて評価は★3.5くらいで、ポーラの歌声とラストの演出も加えると★4.0という評価になりました。
いつかリメイク版の『コーダ あいのうた』を見てみたいと思います。
余談で、原題の『La famille Bélier』は日本語直訳で、「ベリエ家」「ベリエ家の人々」という意味です。